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泡のように
第9章 8.
「なぁ、秋芳と付き合ってるってマジ?」

 短い春休みが終わりクラス替えが行われた教室には慣れない顔が所狭しと並んでいる。

 前の席の木戸虎太郎とは3年になって初めて同じクラスになった。

 彼は花粉症なのかお洒落なつもりなのか真意は不明だが、いつもマスクを着用している。髪型はスタンダードなヤンキーヘア。前髪と襟足だけロン毛金髪であとは坊主っていう。

 いでたちも典型的なヤンキースタイルだ。
 ひょろりとした身体に羽織った学ランの下は黒のタートルネックで、下は腰パン。中身が乏しそうな偽物と於保しきヴィトンダミエの長財布はズボンの後ろポケットINで、じゃらじゃらうるさいクロム・ハーツ風のメッキのチェーン付き。ちなみに眉毛は全剃りだ。

 彼が席に着くと腰パンと学ランの隙間から見たくもないのに毎日毎日カルバン・クラインのロゴが覗いて見えてノイローゼになりそうなレベル。

 授業中は寝てるかラインしてるか立ち歩いて仲間と私語雑談しているか、とにかく品行方正とは真逆を疾走する生徒だ。しかも挨拶は「チョリース」。確実にツイッターで「なう」「わず」を乱用するタイプの人間だ。
 私がこの世で最も嫌いなタイプの男だと言える。

 ただでさえ好感を抱けない男なだけに、休み時間、窓際の席最大の恩恵といえるポカポカ陽気に全身を包まれ、机に突っ伏して熟睡していた私の耳元で例の言葉を囁かれた時は軽い殺意が芽生えた。

 ガバッと起き上がり、目の前の木戸を睨み付ける。マスクで隠れていて表情は読めないが、涼しげな目元は三日月型に細く歪んでいた。

「噂になってるよ。野球部のやつが、あんたらが駅でキスしてたのを見たって」

 先生のアパートから始発電車に乗って朝帰りした日。まだ日も昇らない閑散とした改札で、別れ際に先生とキスをした。
 いくら学校からは遠く離れているとはいえ通学圏内。浅はかな行動だったとは思っていた。けど、まさかあんな時間のプラットホームに、朝練に向かう野球部の同級生がいたなんて。


「だったら何よ」

 精一杯強がって再び机に突っ伏す私の頭上で木戸は唇をヒュゥと鳴らした。何時代のリアクションだよと思う。

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