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泡のように
第12章 11.
「急に何言ってんの!?私そんなこと」
「でなきゃ篤志が、あんなに純粋で優しくていい子が、妹なんかを嫁に欲しいってまともな神経で言うと思う?篤志はろくに女を知らないから、あんたにポーッとなってんのよ。あんたのその身体に。そうに決まってる」

 ゴホン、咳払いと共にカーテンの向こうで隣のベッドが軋み、足音と共に廊下の向こうへ消えていく気配がした。
 顔から火が出るようだ。耳まで熱くなっているのが分かる。

「ちょ、ちょっと、何言ってるの、ほんとにやめてよ」
「そうよ・・・篤志を誘惑するくらい、わけないわよね。
 お父さんを誘惑して抱かれてたのだって本当は気付いてた。
 今だってお母さんには友達だって嘘吐いてるけど、本当は男の人のウチで世話になってたんでしょ?
 ねぇまさか、ずっと前からあんた、篤志に自分を抱かせてたんじゃない?
 そうよ、でなきゃ、お母さんっ子だった篤志が急に私を突き放すようになるわけないわ。
 出ていくなんて言い出して。
 本当はお母さんね、気付いてたのよ、ずっと。
 篤志が出ていってから毎日あんたは篤志のうちに泊まって、じきにピルを飲みたいって言い出して。
 おかしいってわかってたの。
 でも、あの可愛い篤志がまさか智恵子なんかとそんなことって信じたくなくて・・・
 どうしてもっと早く認めなかったんだろう。
 お母さんも弱かったんだわ。
 現実を認めるのが怖かったのよ。
 認めたら全部、健児さんが残したものも私の生活もすべて壊れてしまいそうで。
 全部あんたのせいよ。
 あんたのせいで篤志までまともじゃなくなっちゃって」

 ウサギみたいに真っ赤になったお母さんの瞳が私を睨み付ける。
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