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泡のように
第14章 13.
お兄ちゃんが口を開く。
「一昨日、母の病院であなたを見かけた時から、ずっとあなたのことばかり考えていました」
思わず私と先生は目線を合わせた。
構わず、お兄ちゃんは先生を見つめたまま、話を続ける。
「秋芳さん。僕ね、今までずっと、いつか智恵子に男が出来たら、祝ってやりたいって思ってました。うちはわりと複雑な家庭環境だったもので、智恵子を幸せにしてくれる男が現れたら、兄貴として頭下げて、よろしく頼みたいって」
先生は瞬きもせず、お兄ちゃんを見つめていた。
いいや、金縛りにあったように、視線を逸らすことが出来なかっただけなのかも知れない。
「で、でも、実際はそうじゃなかった。僕ね、生まれて初めてです。こんな気持ちになったのは。一昨日の晩、あなたを初めて見た時から、ずっとこんな気持ちでいるんです。不思議ですね。智恵子には幸せになってもらいたいのに」
ミーンミーン。
蝉の声と校庭を駆けるラグビー部の生徒たちの声が耳の中に響いている。
「僕はあなたのことが憎くてたまらなくて。本気であなたをぶっ殺してやりたいって、こんな気持ちで、ずっと、いるんです。一昨日から、今日、あなたが智恵子を二日酔いで学校に寄越してからも、ずっと。あなたを見た時から・・・」
お兄ちゃんは、見たこともないような顔で笑って、それでいて、瞳、鳶色の瞳だけは、真っ直ぐに先生を睨みつけていた。
「いいや・・・違うな。智恵子に男が出来たって気付いた時から、ずっと、そう思っていたのかも知れません」
そして、最後にお兄ちゃんは、笑うのをやめた。
「一昨日、母の病院であなたを見かけた時から、ずっとあなたのことばかり考えていました」
思わず私と先生は目線を合わせた。
構わず、お兄ちゃんは先生を見つめたまま、話を続ける。
「秋芳さん。僕ね、今までずっと、いつか智恵子に男が出来たら、祝ってやりたいって思ってました。うちはわりと複雑な家庭環境だったもので、智恵子を幸せにしてくれる男が現れたら、兄貴として頭下げて、よろしく頼みたいって」
先生は瞬きもせず、お兄ちゃんを見つめていた。
いいや、金縛りにあったように、視線を逸らすことが出来なかっただけなのかも知れない。
「で、でも、実際はそうじゃなかった。僕ね、生まれて初めてです。こんな気持ちになったのは。一昨日の晩、あなたを初めて見た時から、ずっとこんな気持ちでいるんです。不思議ですね。智恵子には幸せになってもらいたいのに」
ミーンミーン。
蝉の声と校庭を駆けるラグビー部の生徒たちの声が耳の中に響いている。
「僕はあなたのことが憎くてたまらなくて。本気であなたをぶっ殺してやりたいって、こんな気持ちで、ずっと、いるんです。一昨日から、今日、あなたが智恵子を二日酔いで学校に寄越してからも、ずっと。あなたを見た時から・・・」
お兄ちゃんは、見たこともないような顔で笑って、それでいて、瞳、鳶色の瞳だけは、真っ直ぐに先生を睨みつけていた。
「いいや・・・違うな。智恵子に男が出来たって気付いた時から、ずっと、そう思っていたのかも知れません」
そして、最後にお兄ちゃんは、笑うのをやめた。