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傍にいてもいいの?
第10章 決戦日
『この度は我が娘、浅川由梨子の婚約披露パーティーにお越しくださいまして誠にありがとうございます。
一人娘ということもありまして、盛大にさせて頂きました』
由梨子さんの父で、わが社の取引相手でもある浅川社長が挨拶をしている。
その右隣には和服姿の女性は....きっと、由梨子さんの母親だろう。
舞台上の浅川社長はとても嬉しそうに来賓の方々に挨拶しているのがわかる。
左隣には同じように笑顔の由梨子さんが立っていた。
『さて、次は娘の由梨子から皆様にご挨拶させて頂きます。さぁ、由梨子....』
浅川社長が由梨子さんにマイクを渡すと一礼した由梨子さんが話し出した。
『皆様こんにちは。娘の由梨子でございます。お忙しい中、私のためにお集まり頂き誠に感謝いたします........』
観たくない。
観たくないのに、あたしの手はボタンを押せずにいた。
まだ画面には佑典さんは映っていない。
きっと、舞台袖にいるんだ........。
佑典さんも、上司である専務に言われたのなら断りきれなかったんだろうなぁ........。
きっと、あたしの実家がお金持ちで........
浅川社長よりも大きな会社を経営していて........
あたし自信もどんな圧力にも負けないくらい強かったら........こんなことにはならなかったのかな。
佑典さん....ごめんなさい。
あたしが弱くてごめんなさい。
佑典さん........
佑典さん........
また涙が零れたとき、テレビから大きな歓声が聞こえた。
『それでは、お待たせいたしました。わが社の未来の社長になるであろう由梨子の婚約者を紹介します』
観たくないのに、あたしの視線はテレビに向いてしまう。
『義兄の部下でもある内藤佑典君です!』
『オォー』とか『ワァー』とか沢山の声が聞こえると由梨子さんと一緒にならんで佑典さんが舞台中央に向かって歩いている。
由梨子さんはカメラ目線になると専務室で見たあの勝ち誇った顔をしてきた。