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傍にいてもいいの?
第10章 決戦日
テレビに映る佑典さんに釘付けになる。
傍にいてほしい大好きな人があたしの傍にはいない。
その代わりに、あたし以外の女性の隣に立っている。
表情は........あたしに見せてくれる優しい笑顔ではないけれど。
それでも、佑典さんの姿が観られただけで嬉しいと思ってしまう。
『さぁ、佑典君。皆様にご挨拶を........』
浅川社長が佑典さんにマイクを渡す。
それを受け取った佑典さんは一礼して舞台下にいるお客様達をじっと見渡す。
『皆様こんにちは。内藤佑典です。此処にいらっしゃる皆様には是非とも承認になっていただきたく、これから話します私の話を聞いて頂きたいと存じます』
佑典さんの言葉で割れんばかりの拍手が沸き起こる。
あたしの両目からは止まることの無い涙が溢れる。
聞きたくない。
けれど、観てしまう。
佑典さん........あたし、此処にいるよ。
同じホテルに来てるんだよ。
届くことはないって解っていても、思わず叫んでしまう........。
「やだ!やだ!.....佑典さん!.......あたし、ここだよぅ.........」
テレビに齧りつくかのように近づいて、あたしは佑典さんの言葉を待っていた。
『まず始めに、皆様にご報告が御座います........』
佑典さんの言葉にドキリとしたあたしは次の言葉ではもっと大きな衝撃を受けた。
『私、内藤佑典は....浅川由梨子さんと婚約、結婚することはありません!!』
「え?!」
この言葉に驚いたのはあたしだけではない。
同じ舞台に立っている浅川社長だってそう。
由梨子さんもだ。
そして、招待されたお客様だってそう。
さっきまで歓声が上がっていたのに、今ではとても静かになってる。