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傍にいてもいいの?
第10章 決戦日
『........ここにいるよ』
専務は胸ポケットから1枚のカードキーを取り出して佑典さんに手渡した。
少しだけ佑典さんの耳元に近づいて何か話してる。
佑典さんも頷いて、クルリと振り返るとちょうどカメラ目線。
『ひとみ、今から迎えにいく。もう少しだけ待っていて』
それだけ言うと、佑典さんは同期の仲間たちに『後は任せた』と告げて走りだし部屋を出ていった。
佑典さんが部屋を出たところで、あたしもテレビ画面を消してソファーに座り直した。
「佑典さん....」
思わず呟く。
「よかったぁ........」
言葉にすると、涙が零れ落ちた。
一筋零れると瞬きする度に涙が溢れてきた。
手の甲で拭ってもそれでは事足りず、あたしはタオルを求めてバスルームに向かった。
棚に置いてあるタオルに手を伸ばしたら、ドア付近で物音が。
『もしかしたら....?』
なんて淡い期待を込めてバスルームからでると、息を切らしたあたしの大好きな人が立っていた。
「ひとみ!」
「佑典さん!!」
ソファーやテーブルとか二人の間には邪魔なものがあったけれど、うまくかわして駆け寄って、ギュッと抱き締めて相手の存在を確認する。
「ひとみ....ひとみ....ごめんな........」
「佑典さん....あたしは、もう....だい、じょぶ........」
佑典さんの背中に腕を回して、大好きな香りに包まれたら止まりかけた涙はまた溢れる。
ストッパーが外れたかのように止め処なく。