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傍にいてもいいの?
第5章 惹かれていく心........
部長に促されるまま歩きエレベーターに乗り込む。
日曜日は沢山の人が訪れるからエレベーターも混雑してる。
部長も気を使ってくれたのか会話はない。
そのまま屋上駐車場へ到着。カートを押しながら部長の車に向かう。
部長の手はまだあたしと重なったまま。
『ピピッ』
と音がして目の前に車があることに気づいた。
「笹倉、すまなかったな....」
部長に謝られてあたしの止まった思考が動き出す。
「そ、そんな....謝らないでください」
「彼....なんだね。君にそんな顔をさせているのは」
部長があたしの頬に触れて親指で目尻を拭う動作で泣いているのに気づいたくらい。
それほどショックだったみたい。
亨と新しい彼女の仲睦まじい姿が........。
「笹倉?」
呼ばれてちゃんと顔を上げて部長を見る。
「俺が告白したの....ちゃんと覚えてる?」
「え?」
あのときの告白........本気だったんだ。
「もう一度、いうよ?ちゃんと聞いててよ?」
コクコク頷くだけのあたしに微笑んでくれる部長は、今のあたしにとても嬉しい言葉を紡いでくれた。
『コホン』とひとつ咳払いして。
「笹倉ひとみさん。初めは貴女の仕事に取り組む一生懸命な姿や、ミスをした後輩のフォローや指導する姿に惹かれていきました。
そして、嬉しいことも辛いことも色々経験した貴女は人としてさらに成長して羽ばたいている。心の痛みを知っている人間はとても強いんだよ。
けれど、俺の傍に居るときくらいはその羽根を休めてくれないかい?」
「部長........」
あたしの瞳からは一筋の涙が流れ落ちる。