この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
傍にいてもいいの?
第6章 穏やかな時間
ことの始まりは春に行われたゴルフ接待だったようで........
専務と部長は取引相手でもある専務の妹夫婦とその娘とゴルフに出掛けた。ここには、課長も一緒だったらしい。
その専務の姪....取引相手のお嬢さんは課長よりも部長のことを気に入った。
でも、部長には心に決めた人がいるからと断りを入れた。
一度は諦めたお嬢さんだが、やっぱり諦めきれなくなって伯父である専務に相談したという。
部長も独身だからと、近々顔合わせという名のお見合いが出来るよう専務はすみれに働きかけている、と。
「我が儘なお嬢様のやり口だよな....」
「お金さえあれば人は動くと思ってるんだよ」
「部長....どうするんだろう」
「仕事ができる男は大変だなぁ~」
「........」
みんながいろいろ呟いてるけれど、あたしはなにも言えない....。
それどころか、伝えなきゃいけないことがあるのに........。
部長が........
佑典さんが........
お見合い、しちゃうの?
あたしたち、付き合いだしてまだ一ヶ月だよ?
まだ........キスしかしてないんだよ?
「ひとみ、どうしたの?え、泣いてるの!」
向かいの席に座るエリに言われて顔をあげた。
頬を触ると確かに濡れてる........。
心配そうに見つめるエリ。
隣にいる大輔もそう。
横に座る健一とすみれも........。
あたしは意を決してみんなに伝えた。
「あたし、前回の飲み会の時にフラれたって話したでしょ?」
4人が揃って頷く。
「その日にね、住んでるアパートの近くで車同士の事故があって........弾かれた自動車があたしの部屋に突撃して住めなくなってね」
「あ、それ知ってる。ニュースでやってたよ!ね、大輔」
「見たことがある場所だと思ったら....あれ、ひとみの家だったんだな........」
「うん、そうなの。でね、その時部長と一緒にいてね....引っ越しの手続きとか全て手配してくれたの」
「え?ひとみ、引っ越ししたの?」
「すみれ、ごめんね。なかなか連絡できなくて....住所変更の手続きしたからすみれからの荷物は今の家に届いたよ」