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傍にいてもいいの?
第8章 天敵、現る........

「え....諦めるって........」
『ふぅ....』
と、隣からひとつ溜め息がもれる。
続いて、柔らかい声があたしの左耳に届いた。
「ご理解頂けないのかしら?もう一度、私から説明しますわね」
ゆっくり左を向くと柔らかい声の持ち主は、今まで微笑んでいた顔を鋭い目付きに変えてさっきとは違う声色で言葉を紡ぐ。
「あなたの上司でもある内藤佑典さんは、私、浅川由梨子の婚約者なの。
最近、何処ぞの子猫を拾ったと伺ったわ。それが貴女でしたのね。
申し訳ないけれど、彼の隣に立つのはあなたでは無理。普段の仕事ぶりもミスが多いと聞きましたわ。
それに、佑典さんは数年後わが社のトップに立つお方。火遊びもあなた相手では佑典さんの株が下がりますもの........。
ですから、傷付く前に身を引いていただけないかしら?ね、おじさま?」
頷く専務も
「今週末、ふたりの婚約披露をする。笹倉くんはそれまでに気持ちの整理と今後の目処をつけてくれないかね」
『話は以上だ』
専務は顎で指示をだすと、入口で待機していた秘書はあたしの側まで来て部屋を出るように促す。
納得できないあたしはその場で耐えるのだが、所詮男のひとには力で勝てるわけがない。
最後は引き摺られるように追い出された。
部屋を出ていく間際、佑典さんの婚約者だという浅川由梨子は勝ち誇った顔をしていたように見えた。
佑典さん........
お見合いじゃなくて、婚約ってどういうことですか?
佑典さん........
何故、あたしに話してくれないの?
佑典さん........
あたし、どうしたらいいの?

