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藍城家の日常
第7章 姫はじめ ~形勢逆転の夜~
『許されないのなら……それで、良いです……これ以上は我儘は言いません』
見下ろしている誉がきゅっと口元を引いて、少し憂い気に視線を逸らす。
夜光はここで許さなければいけない気が直感的にした。
「…………」
……好きにしろ……
夜光は目を瞑り、言葉に出す代わりにすっと両手を小さく上げてみせた。
『♪』
「……っ」
ぐっと胸に重心を乗せられていた誉の片足が下ろされる。
彼女の言動に怒るも何も、驚きのあまりその気も失せてしまった。
どうやら誉は酒を飲むとひとが変わるらしい。
酒を飲ませたのは己であるし、責任はとらなければいけない……
無理やりねじ伏せて抱くのも新年早々気が進まない、今夜は彼女の好きにさせた方がよさそうだ。
ーーそう妥協して酔った彼女に主導権を握らせてしまったのが彼の失敗だった。
ーーー
「……お前は激しいのが嫌なんだろう……なら、これからゆっくりと、たっぷりと愛せばいいのか?」
体の力を抜いたまま、誉に身を委ねていた夜光はぼそりと問いかけた。
妻が今まで言えずにいた本音のようなものを彼は気にしているのである。
その無防備な美しい体を指先でつつっと撫でながら、魅惑の笑みを浮かべていた誉はふと顔を上げた。
『……たとえそうしても、刺激が足りなくて物足りなくなってしまいそう……もう戻れない体になってしまいました、あなた様のせいで』
ーーそれに、ゆっくりなんてできないでしょう?ーー
少し小馬鹿にしたように、意地悪く口の端を上げている。
「……」
じろっと彼女を睨む。
……黙れ。お前は俺に抱かれて鳴き喚いていればいい……
そう心の中で悪態をつきながらも、夜光は今の誉の態度に新鮮さを感じていた。