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藍城家の日常
第3章 桃のシロップ漬け
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小鳥のさえずりと朝の日差しに導かれて、目を覚ますと夜光は居なかった。
誉はもそりと起き上がる。
眠気眼を擦りながら、ぼんやりとした意識で辺りに散らばる衣服を見つめた。
『……』
(何だっけ……どうして、ここにいるのだろう……)
ふと下を見て、誉はぎょっと目を見張った。
丸裸だったからだ。
誉は慌ててそこらにあった布をかき集めて、隠す。
(そうだった……私は、夜光様と……)
布団に染みて色褪せた血の跡を見て、昨夜のことがフラッシュバックして甦る。
(契りを結んだんだ……)
誉は呆然として、また辺りを見渡す。
四畳半の部屋は、差し込む朝日に溢れていた。
眩い光に目がちかちかする。
『……動かなくちゃ』
やがて、ぽつりと誉は呟く。
しかし体を起こそうとすると
『いっ……』
鈍い痛みが股間を走る。
何かがずっと挟まっているような違和感……
誉は眉をハの字にした。
(昨日の感覚が、まだ残っているんだ……)
「……起きたか」
ーーートン、と襖が締められる。
また気配もなく現れた夜光に、誉はびくりと体を揺らした。
『……はい。おはようございます』
昨夜のことが脳裏にちらついて、誉は夜光を見れない。
俯いて、近付いてくる夜光の足元を見つめている。
「痛むか」
『少し……』
恭しくて、何だかぎこちない。
そんな彼女を見下ろしていた夜光は、誉のすぐそばで胡座をかいて座る。
手には皿と小さなナイフ。そして……
ふわりと漂う甘い匂い。
『……桃?』
誉はきょとんとして、そのよく熟していそうな白桃を見つめる。
「桃」
ショリショリと夜光はナイフで、桃の皮を向く。
その動作に無駄が無くて、誉は知らぬ間に見入っていた。
産毛のある皮から、子供の頬のような赤みを帯びた果肉が現れ、ぽたっ……と果汁が、彼の手から滴って皿の上に跳ねる。
喉が乾いていた誉は、強くなった桃の匂いに、ごくりと唾を飲み込んでいた。
誉はもそりと起き上がる。
眠気眼を擦りながら、ぼんやりとした意識で辺りに散らばる衣服を見つめた。
『……』
(何だっけ……どうして、ここにいるのだろう……)
ふと下を見て、誉はぎょっと目を見張った。
丸裸だったからだ。
誉は慌ててそこらにあった布をかき集めて、隠す。
(そうだった……私は、夜光様と……)
布団に染みて色褪せた血の跡を見て、昨夜のことがフラッシュバックして甦る。
(契りを結んだんだ……)
誉は呆然として、また辺りを見渡す。
四畳半の部屋は、差し込む朝日に溢れていた。
眩い光に目がちかちかする。
『……動かなくちゃ』
やがて、ぽつりと誉は呟く。
しかし体を起こそうとすると
『いっ……』
鈍い痛みが股間を走る。
何かがずっと挟まっているような違和感……
誉は眉をハの字にした。
(昨日の感覚が、まだ残っているんだ……)
「……起きたか」
ーーートン、と襖が締められる。
また気配もなく現れた夜光に、誉はびくりと体を揺らした。
『……はい。おはようございます』
昨夜のことが脳裏にちらついて、誉は夜光を見れない。
俯いて、近付いてくる夜光の足元を見つめている。
「痛むか」
『少し……』
恭しくて、何だかぎこちない。
そんな彼女を見下ろしていた夜光は、誉のすぐそばで胡座をかいて座る。
手には皿と小さなナイフ。そして……
ふわりと漂う甘い匂い。
『……桃?』
誉はきょとんとして、そのよく熟していそうな白桃を見つめる。
「桃」
ショリショリと夜光はナイフで、桃の皮を向く。
その動作に無駄が無くて、誉は知らぬ間に見入っていた。
産毛のある皮から、子供の頬のような赤みを帯びた果肉が現れ、ぽたっ……と果汁が、彼の手から滴って皿の上に跳ねる。
喉が乾いていた誉は、強くなった桃の匂いに、ごくりと唾を飲み込んでいた。
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