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藍城家の日常
第4章 手取り足取り腰取り
誉が藍城家に来てから、季節は初夏に移り変わった。
春のまどろみをまだ少し残しながらも、生温く湿った空気が肌を撫でるようになり、広い庭には春に息吹いた新芽が青々と丈を伸ばす。
新生活が始まっても、自分の立場が何なのか、誉にはよく分からない。
妻?なのか……
それとも妾?
もしかするとそれ以下?
よく分からない……
誉はとりあえず彼、夜光を日々知ろうと努めるようにしている。
さて、そんな藍城家の日常は、当たり前だが彼を軸にして進む。
夜光は普段屋敷にいて、彼の書斎で仕事をしているようだ。
だからいつも屋敷に彼は居るのだが、時折何日か出かけることもある。
出張に行くのだそうだ。そう彼は言っていた。
炎鬼の話によると、人間と鬼の血を半々に引く夜光は、あやかしの世界と人間界、どちらも行き来できる媒介人のような存在らしい。
何でも彼の母は帝、結羅様と旧友で、何故結羅様が彼と親しいか、誉には頷けたのだった。
誉の日課は、ここに来た以前とそう変わらない。
朝は井戸から水を汲んで、架音の朝餉作りを手伝うために早く起きるけど、それよりもずっと前に夜光は起きている。
誉がどんなに頑張って早起きしてみても、布団は夜光が出た後だ。
彼はあまり、眠らないらしい。
朝餉を食べたら、片づけをして庭で洗濯をする。
それから昼餉の用意まで屋敷の掃除。
昼餉を食べたら、掃除の続き、庭の手入れをしたり、架音と買出しに行ったりと決して暇ではない。
それから夕餉の用意を始める。
ところで彼は味噌汁は白味噌派だ。
誉は炎鬼が赤味噌派だったので当然赤味噌派だったが、この白味噌の味噌汁を飲むようになってから、白味噌も良いじゃないか、と思うようになった。
彼は出された食事はほとんど余すことなく食べるけど、たった一つ、苦手なものがあると誉は最近気づいた。
椎茸だ。
椎茸だけはいつも皿の端にチョコンと残っているのだ。
春のまどろみをまだ少し残しながらも、生温く湿った空気が肌を撫でるようになり、広い庭には春に息吹いた新芽が青々と丈を伸ばす。
新生活が始まっても、自分の立場が何なのか、誉にはよく分からない。
妻?なのか……
それとも妾?
もしかするとそれ以下?
よく分からない……
誉はとりあえず彼、夜光を日々知ろうと努めるようにしている。
さて、そんな藍城家の日常は、当たり前だが彼を軸にして進む。
夜光は普段屋敷にいて、彼の書斎で仕事をしているようだ。
だからいつも屋敷に彼は居るのだが、時折何日か出かけることもある。
出張に行くのだそうだ。そう彼は言っていた。
炎鬼の話によると、人間と鬼の血を半々に引く夜光は、あやかしの世界と人間界、どちらも行き来できる媒介人のような存在らしい。
何でも彼の母は帝、結羅様と旧友で、何故結羅様が彼と親しいか、誉には頷けたのだった。
誉の日課は、ここに来た以前とそう変わらない。
朝は井戸から水を汲んで、架音の朝餉作りを手伝うために早く起きるけど、それよりもずっと前に夜光は起きている。
誉がどんなに頑張って早起きしてみても、布団は夜光が出た後だ。
彼はあまり、眠らないらしい。
朝餉を食べたら、片づけをして庭で洗濯をする。
それから昼餉の用意まで屋敷の掃除。
昼餉を食べたら、掃除の続き、庭の手入れをしたり、架音と買出しに行ったりと決して暇ではない。
それから夕餉の用意を始める。
ところで彼は味噌汁は白味噌派だ。
誉は炎鬼が赤味噌派だったので当然赤味噌派だったが、この白味噌の味噌汁を飲むようになってから、白味噌も良いじゃないか、と思うようになった。
彼は出された食事はほとんど余すことなく食べるけど、たった一つ、苦手なものがあると誉は最近気づいた。
椎茸だ。
椎茸だけはいつも皿の端にチョコンと残っているのだ。