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藍城家の日常
第4章 手取り足取り腰取り
これではいけない、どうにかしようとこのことを架音に話してみても、絶対に食べないから諦めろとスッパリ切られてしまう。

姉のように頼りになる架音。
そう言えば、彼女から聞くには、屋敷には夜光と架音、そして自分以外に誰も住んでいないらしい。

こんな大きいお屋敷なのに……

誉は三にんしか居ないこの広いお屋敷を、持て余しているようで、何となく寂しく感じる。
それは、今まで暮らしてきた炎鬼の屋敷がいつもひとに溢れていたからかもしれない。


さて、
夕餉を食べた後、誉は完璧に夜光のペースに引き込まれてしまう。

誉はあの、“籠の部屋”ーーー誉は心の中でそう呼んでいるーーーで、彼に抱かれるのだ。

体を重ねる毎に、誉は自分が何をすべきか、段々と分かるようになってきた。

ただ抱かれるだけでは駄目だということ。
自分は彼の一挙一動に目を配って、それに応えなければいけないということ……

事後の誉はへとへとになって、彼に抱き枕にされながら眠る。

そんなこんなで、やっと誉の一日が終わるのだ。

でも今はちょっと違う状況。
それはある、よく晴れた昼下がりのこと。
誉は大好きな昼寝をしていた。

夜光様は一週間と長い出張に行ってしまわれたので、ここ数日はちょっぴり自由に行動できる。


「ふぁ~……」


存分に眠ることができた誉は、布団からむくりと体を起こして欠伸をした。
少し乱れた髪に、欠伸で潤んだ眠気眼。

大きく伸びをした誉は、これから何をしようかと、まだぼんやりとした頭で思案を巡らす。


「……」


ふと目に入った腕の小さな痣を、じっと見つめる。
出張に出かける前の夜につけられた、その痣が“彼のもの”である証のように見えて、忘れてはいけないと、どこか見張られているような、そんな感じがする。


「っ」

ドクン


薄くなりかかっているその部分にそっと触れると、急にその日の夜のことが脳裏に浮かんだ。

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