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§ 龍王の巫女姫 §
第2章 峭椋村の巫女姫
振り向くより先に、大柄な男が前に回り込んで話しかけてきた。
「なんだって顔を隠してんだい?」
「…そ…れは」
「…っ、へぇ…!!」
今度は男が驚いた。
なんという…鈴の音のような澄みきった声だろう。
「さっき笠布の隙間からチラッと顔が見えてたぜ?…なかなかのべっぴんさんだなあ!」
「──…え、…//」
べっぴんさんという言葉に照れると同時に、顔を見られていたことに恥ずかしさが込み上げる。
返す言葉がわからずに困り果てた彼女──
声をかけた大男は気さくに接していた。
「…んまぁそれはいいや!それより姉ぇさん、饅頭を食ってかないか?」
「饅頭…!」
「おおよ」
「そんな…、本当に良いのですか?」
意外にも彼女は誘いに食いついた。
饅頭( マントウ )といえば、先程からそんな看板を掲げた下で、美味しそうな匂いがしていたのを思い出す。
ゴクリ…
“ 食べたい…!! ”
自身の誘惑と葛藤し始めたところで、大男が隣の店を指差す。
「俺の店はここだよ」
彼女の背に手を添えて自分の店まで連れていった。