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§ 龍王の巫女姫 §
第2章 峭椋村の巫女姫
女が身に纏っているのは、周りの女人と同じような衣である。
そこに頭に笠( カサ )を被り、笠から垂れた布地が彼女の腰までを全方位から囲っていた。
よって、女性であることは確かなのだが…若いのか老いているのか、その表情を見ることはできなかった。
──と、その時…
「──…」
女を囲む布地の切れ目から、さっと白く可憐な指が現れた。
その指が前方の布を少しだけめくる。すると…
小さくぷっくりとした桃色の唇と、紫紺の瞳を閉じこめた大きな目が、笠布の隙間からのぞいた。
カラン... . . カラン.... . . .
ゆったりゆったりと進むその足どりは優雅この上ない。
けれど彼女からしたら、それは戸惑い故のにぶった歩みでしかなかった。
活気溢れる王都一のこの市場で
ポツリ立ち止まった彼女の目だけが、周囲と同じようにキョロキョロとせわしなかった。
「おーい!そこのお姉ぇさん」
「……っ」
不意に呼び掛けられて彼女は肩をすくめた。