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§ 龍王の巫女姫 §
第8章 託宣( タクセン ) ── 若王の秘密
上空に、一羽の鷹が旋回していた。
小鳥たちのさえずりが控え目だと感じ、水鈴が空を仰ぐと、高く飛ぶ鷹の姿が目に映る。
この辺りには珍しい…。
その鷹は数回の旋回ののちに去っていった。
「このような所にいらっしゃったのですね!」
「……ぁ」
「お戻り下さい、さぁ…こちらへ」
慌ただしく彼女のもとに駆けてきたのは、水鈴の付き人である女官だった。
水鈴の倍以上を生きているのだろう、その女官は、しわの入った口許を怒りをこめた " へ " の字にして近付き
外を歩いていた水鈴を連れ戻した。
────
後宮の一室に通された水鈴の前には、すでに準備の整えられた食卓があった。
食欲などわかない彼女に、なかば強制的に振る舞われる。
「どうぞ御召し上がり下さいませ」
「わかっています…」
「…ハァ…本来ならば、このように御食事にまで、私めが口を出すなど不必要なのですが…」
女官は言葉遣いこそ丁寧ながら、皮肉な言い回しを忘れない。
女官だけでなく宦官も似たようなもの…
慇懃無礼な彼等とのやりとりも、彼女の食欲をなくす原因だった。