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§ 龍王の巫女姫 §
第2章 峭椋村の巫女姫
大男が女の肩から手を離した。
「──…!!」
笠布で視界が遮られているので周りの景色は見られないが、背後からの声を聞き間違うことはない。
涙目の彼女は背後の彼を名で呼んだ。
「…か…せん」
「……」
かせん、と呼ばれたのはスラリと高い背丈の、薄墨色( ウスズミイロ )の長髪を後ろで弛く結んだ男──。
まだ若く美丈夫に違いない。
先程の声といい、中性的な雰囲気を感じる。
しかしその男は、女と同じように頭に笠を深々と被り、口許しかその顔を見ることはできなかった。
「誰だ?」
「その娘の知り合いだ。…状況は把握したので…、私がお代を払わせてもらう」
彼は店の饅頭と、男の持つ空の小皿に顔を向けながらそう告げた。
それなら問題ねぇ…。
男は彼からお代を受けとり、何事もなかったかのように仕事に戻っていった。
────…