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§ 龍王の巫女姫 §
第2章 峭椋村の巫女姫
───…
それから一刻が過ぎた。
朱雀大路の市場から姿を消した二人はいま、王宮から北に向かった森の中を歩いている。
王宮の南方には立派な王都が広がるのものの、その反対側にはまだ多くの自然が手付かずで残されているのだ。
「…待って花仙…ハァ、もう足が痛いわ」
前側の笠布を外して歩く彼女は、ずんずん進む男の背中に訴えてみた。
しかし彼が振り返ることはない。
「…もうすぐ村です。それに…、手を切られることを考えたならこの程度の山道など」
「けれど…」
「──…何かご不満でも?」
「……っ」
怒っている…。
今日の花仙はちっとも優しくないのです。
《また》助けられた身となっては、冷たい態度の彼に何も言い返すことができないでいた。