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§ 龍王の巫女姫 §
第10章 春節の夜
朱雀大路だ。
遠く突き当たりには大きな門が見える。それは、まさに王宮への入り口である。
「──…すごい」
水鈴は瞳を輝かせた。
通行人の賑やかさは相変わらず。
道を挟む家々には赤い提灯がさげられており、夜だというのに異様な明るさだ。
そして家門の両端には、赤い掛軸。
それには水鈴の手にある札と同じように、金色の文字が書かれていた。
他にも《福》と書かれた赤い布── 都中が赤色だった。
「元正月は二日後だが、飾りつけは毎年早めにされる」
「あ、…待って下さい」
都らしい華やかさに水鈴が見とれていると、炎嗣は人の流れに沿って歩み出す。
勿論──彼女が後を付いてくると見越してだ。