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§ 龍王の巫女姫 §
第10章 春節の夜
こんな所ではぐれるわけにはいかず
咄嗟に小走りで駆け寄る水鈴。
それでも、大股で歩く炎嗣には追い付かない。
“ そうか…、あの日もわたしは ”
こんな風に、彼の背中を追いかけたんだ。
彼の──花仙の背中を。
黙って都におりたわたしに花仙は怒っていたから、わたしが何度か呼び掛けても振り向いてはくれなかった。
商人ともめて腕を切られそうになっていたところを助けてくれた彼は、ただ黙って前を歩いていた。
『それほど都に行きたいのでしたら…、その時は、せめて私に供させて下さい』
『わかったわ、花仙』
いつかの約束を
わたしが、破ってしまったから──。