この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
§ 龍王の巫女姫 §
第10章 春節の夜
炎嗣が餃子を差し出したのは、店と店の隙間で座り込んでいた……小さな男の子だった。
目の前で立ち止まった沓( クツ )──
顔を上げた少年は、突然の声に反応することもできず炎嗣を見詰めるだけ。
代わりに驚いたのは水鈴だ。
「誰…!? この子」
「お前、俺の代わりにこれを捨てておけ」
「……!!」
包みを差し出した炎嗣
少年は無言で見上げたまま
「──…」
受け取ろうとしない。
「…お前の父上は? 」
「──…、死んだ…病気で」
「…そうか、母上はどうした」
「家で待ってる、よ」
「なら…」
炎嗣は、普段通りの冷たい声で少年に話しかける。
「母上と食すがいい。…これはその為の食い物だ」
「……うん」
少年がやっと手を差し出すと
炎嗣は彼の腕に包みを落とした。