この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
§ 龍王の巫女姫 §
第10章 春節の夜
「……ここは髪飾りも扱っているのか。…水鈴!」
「は、はい?」
「もっと近付け。笠が邪魔でよく見えない」
店棚の商品に関心を移した炎嗣には、餃子の件など煩わしいだけ。
「お前の髪色には…どのような髪飾りが映えるのだろうな」
彼女の銀髪を人目にさらすわけにいかないから、笠は外さずに、炎嗣が腰を屈めて覗きこんできた。
少し下からのその視線は新鮮で
水鈴は半歩、後ずさりながら思わず顔をそらした。
炎嗣は手にした簪( カンザシ )を彼女の頬の横に近付けて、その色合いを見比べている。
「こんな事をしていて…ッ 楽しいのですか?」
「…そうでもない。だがこうでもして見立ててやらないと、お前は自分で欲しい物を教えないだろう」
「だから!わたしはこの様な…っ」
「黙れ。騒がしい──」
“ もう!彼は何を考えてるの!? ”
騒がしいもなにも
そうさせているのは炎嗣自身だ。
そんなに市中を見物したいのなら、ひとりか…もっと愛想のある他の妃嬪を連れてくればいいのに。