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§ 龍王の巫女姫 §
第11章 残酷な好機
しかし神が彼女に与えたのは、決意ではなく涙だった。
「…ぅ…うう…」
嗚咽をこらえきれない。
これはいったい、何の涙…?
悲しみか、憎しみか、悔しさか──
土壇場で躊躇する弱さにか
村の惨劇を思い出したことによる恐怖にか
それとも…
こうして人を殺めようとしている、身も心も穢れてしまった自分自身になのだろうか──。
「…ッ…ふ、ぅ…ハァ っ…」
苦しい…っ
「…っ…駄目……」
水鈴は炎嗣の首から凶器を離し
寝台からも後ずさった。
「…でき、な い……っ」
この人を殺すなんて、できない
──どうすればいいの?
苦しい…苦しいわ……!!