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§ 龍王の巫女姫 §
第11章 残酷な好機
そして炎嗣は部屋の中に水鈴の輪郭を見つけた。
彼女を捉えた視線がスッと下に滑り──
「……ふ」
その右手にぶら下がった燭台で止まった。
水鈴の顔に緊張が走る。
「……新しい蝋に付け替えるのか?」
しかしどういうつもりか。
窓灯りに浮かぶ彼の口は笑っていた。
「その必要はない、それを持ってここへ来い」
「……」
「早くしろ、水鈴…──」
「──…無理です」
水鈴が弱々しく応えた。
「…わかっているのでしょう…!? いま、わたしがあなたに近付いたら…っ どれ程、危険か」
「──…」
「少しは警戒してください!あなたはわたしにとって…っ…憎い仇なのですよ!? どうしてそんなに平静でいられるの…!!」
次の瞬間には、彼女は声を荒げていた。
自分はこんなにズタズタに苦しみ、複雑な思いに揺れているというのに…
何もかもを見透かしたような、炎嗣の余裕が怨めしい。
《どうせ、殺せない》
そんな度胸なんてない、それすらも見抜かれているに違いなく…
きっとそんな言葉を返してくるのだろう、と
水鈴は予想していた。
けれど炎嗣が発した言葉は、彼女の予想に反するものだった──