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§ 龍王の巫女姫 §
第11章 残酷な好機
けれどそうやって、いつまでも憎しみで彼女を繋ぎ止めるのは不可能だったのだ。
現に今…彼女は凶器を捨てたのだから。
捨てたくて捨てたくて
悲鳴をあげていたのだから。
復讐という使命は、生きる糧であると同時に毒でもあったから。
「…それに同じ事だ。どちらにせよ村の人間は全員牢につなぐ手筈だった。そしてお前も、俺のものにすると決めていた──…どれだけ抗おうとも」
炎嗣は手首を掴んでいた手を離し、代わりに彼女の肩に手を添えた。
力強く引き寄せる──
「……っ…わたしは、どうすれば…? 」
「生きろ、水鈴──…」
「──…っ」
何かが、切れた音がした。
ぷつりと切れたその糸は、蜘蛛の糸のように弱く心細いものだったけれど、彼女にとっては自分を縛る紐のごとく太い糸だったのに──。