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§ 龍王の巫女姫 §
第12章 紅い灯籠に花を広げ…
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パンッ パンッ
…パンッ
そして今、水鈴は自室の花窓からお付きの女官とともに夜空を眺めていた。
「日付が変わりました。祝いの花火ですね」
「あれが、花火…」
大きな破裂音は昨夜の騒動を連想させるが、空に広がる大きな花は華やかで美しい。
「どういう仕組みかしら」
「さぁ…私にもさっぱりで御座います。腕利きの職人を陛下が雇われてから、こうして打ちあがるようになったのですが」
「綺麗ね…」
水鈴が花火を見たのは初めてではない。
彼女が暮らしていた御堂からも、遠目に眺めることができた。
村の人間は騒がしいと嫌っていたが、好奇心旺盛な彼女は毎年、不思議な光に目を輝かせて魅入ったものだ。
「こんなに近くで見る日がくるなんて…ね」
「…水鈴様?何か仰りましたか?」
「いいえ、何でもないわ」
その後も暫く、人々の興奮冷めやらぬ夜は続いたのだった──。
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