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§ 龍王の巫女姫 §
第14章 湯に溶ける甘い蜜

もとがそう大きくない湯船であるから、隅にいても彼との距離が近い。
「…久方ぶりにこの湯に浸かった」
「……」
岩場の間に頭を預けて、呟いた炎嗣は極楽そうだ。
“ 温泉が好きなのかしら ”
そんなイメージは全くなく、この光景が不思議でならない。
「…いつぶりですか?」
「八年前だ」
「八年!」
何の気なしに聞いてみると予想に反した答えが返ってきたものだから、大きな声で驚いてしまった。
「急に大声を…っ」
「…ぁ ごめんなさい。どうして八年間も来なかった所へ、こうやって…」
「──…来ようとも不可能だった。李王に即位してからは、俺の前には解決しなければならない問題が山積みで……クッ、それはもう呆れを通り越して笑えてくるほどあったな…」
「忙しいのね…」
「……」
炎嗣はこの時言わなかったが、理由はもうひとつある。
離宮というのは、警備が薄れて暗殺にもってこいの場所であるから…
敵の多い彼にとって、心安まる場所とは言えないのだ。

