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§ 龍王の巫女姫 §
第14章 湯に溶ける甘い蜜
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磨かれた石を敷き詰めた浴場があり、その隣の小さな丸い露天風呂に炎嗣の姿があった。
空には鈍色( ニビイロ )の雲が漂い、良い天気とは言い難い。
滑らないようにおずおずと浴場を横切る水鈴に、炎嗣が振り向いた。
「早くしろ、寒いだろう?」
「はい…っ」
急いで湯船の隅にいき、桶で湯を身体にかけてから中に入る水鈴。
──…本当のことを言えば、彼女は寒さに強い。
巫女である彼女は水浴みが習慣であり、例えそれが雪の降る凍える日であろうとも森の湖で身を清めてきた。
それを思えば、これくらいの寒さ…気にするほどでもなかった。
チャプ. . . ン
結い上げた髪から零れた銀色の細糸を、晩冬の風が弄んでから湯に溶ける──…。
普通の湯とは違う、独特な匂いが漂う温泉。
白く濁っているおかげで、浸かってしまえば身体を隠せる。彼女は密かに安堵していた。
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