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§ 龍王の巫女姫 §
第15章 白梅の精
白い岩と竹でできた見事な庭の前を通り過ぎ、廻廊を渡って水鈴は執務室へとやって来た。
お盆の上に二人分の茶器と餅菓子を持っている。
茶が冷める前に渡したい
けれど……
「……」
王宮とは違う、木でできた比較的簡素な扉に向かって立ち止まる。
耳をすますと
部屋の中から話し声が聞こえた。
......
「──…で、それを報告するために来たのか」
炎嗣の声だ。休暇に水を刺されて不服そうである。
「最後にもうひとつ、先日の科挙の件にて不正があると訴えが相次ぎ…これの対応をどうするか」
「…またか」
「官史の登用がさし迫っておりますので、急がねばならないのですが…」
「──…仕方ない。取り敢えずは、規則通りに登用しろ」
科挙とは、官史採用のための大規模な試験のこと。
賄賂を使っての不正が多く
逆に…自分が不採用になったのを理由に、不正が行われたとでっちあげる者も多い。
「…訴えを退けて宜しいのですか?」
「無論、調べる。…地方の役人あたりだろう」
賄賂を得て根回しをした者がいるとすれば
それは有り余るほどの財のある貴族よりも、中途半端に持つ役人が怪しい。