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§ 龍王の巫女姫 §
第15章 白梅の精
そもそも炎嗣は不正があろうがなかろうが…科挙によって選ばれた官史を嫌っている。
書物の知識ばかりを詰め込んだ彼等の頭には
肝心な民の暮らしを考える余裕がない。
「俗世」の事に興味を持たず、詩経の暗記だけを重視する自分を得意気に語る始末だ。
“ 私腹を肥やそうとする輩よりはマシ…、その程度の話だ ”
「では──これから都に引き返し、そのように執り行います。それまでに、陛下にはこちらに目を通して頂きたく…」
「わかっている」
…二人の会話はそこで止まった。
すると、扉の向こうから足音が近付いてきた。
咄嗟に扉から離れた水鈴
けれど使いの男が退出する方が早く、開けられた扉に肩をぶつけて危うく茶器を落としそうに──
「…、水鈴、か」
「……っ」
奥の机から、此方を見た炎嗣が彼女の名を呼んだ。