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§ 龍王の巫女姫 §
第15章 白梅の精
馬が鼻面を腕に押し付けてきたので、優しく撫でてやる。
水鈴がこの馬を散策に連れ出すのは二度目だ。
──都で暴走した馬に踏まれそうになった経験が、最初は水鈴を怯えさせていた。
しかしこの子馬は気性も大人しく、人によく懐いている。
水鈴からは恐いという感情がなくなり…今ではこの生き物が可愛くて仕方がなかった。
「ちょっと前まで…することがないなんて普通だったの」
毛並みをとかしながら心のうちを話していく。
「朝、起きたら…掃除をするの。御神木の落ち葉を集めて、その後はひとりで朝ごはんを食べたわ」
朝餉を運んでくる村人はすぐに帰ってしまっていた。
「湖に水浴みに出掛けて、清水を汲んで帰ったら…御祈りの時間。それが終わったら長老に渡された本を読んだりしてね。あ、あと、薬草がなくなったら山に入ったり」
それが日課だった。
午後になるとひっきりなしに訪ねて来る村の人々が、とても待ち遠しかったのを覚えている、