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§ 龍王の巫女姫 §
第15章 白梅の精
今だって… 待ち遠しいのは同じ。
「午後になったら炎嗣様のお仕事も終わるかしら」
どう思う?
尋ねてみるけれど、子馬はブルルっと小さくいななくだけ。
「…こんな我が儘、恥ずかしいわよね」
湯治中でさえ公務がつきまとう彼に、何もできない自分が子供みたいに駄々をこねてもみっともないだけだ。
「もう愚痴は言わないから…もう少し散歩に付き合ってね」
水鈴は手綱を引いて馬を歩かせる。
もし自分が馬の背に乗ることができたら、この丘を駆け回らせてやることができるのだけれど…
そう思ったけれどそれは叶わない。
いつか乗馬を教わりたい
彼女は静かに決めていた。
──周囲の桃の木々には、花もなく葉もなく、水鈴の視界は遠くまで抜けていた。
風がびゅんと通り抜けたが、馬は寒がる様子を見せず、自然の香りを楽しんでいるようだった。
それは寒さに強い彼女も同じだ。