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§ 龍王の巫女姫 §
第15章 白梅の精
白く小さな梅の花に桃のような華やかさはない。
それでも、桃のそれとは異なる趣の清らかさが自分の周りを包んだとき…水鈴は声を呑むほど幸せを感じた。
光を透過した花びらの美しさが、愛おしい──。
まだ満開には程遠く、膨らんだ沢山の蕾も一緒についていた。
“ 桃源郷にこんな場所があっただなんて ”
みんなは知っていたのだろうか?
知らないのなら勿体無い。
「戻ったら教えてあげたいな…」
水鈴は首を曲げて、青空と白梅の共演に魅入っている。
隣の子馬に寄りかかるように身体をつけた。
“ お婆ちゃんとお爺さんは、ここに住んでいる人だから知ってるかな ”
「帰ったらとにかく聞いてみよう」
それと…──
「…炎嗣様、にも」
彼に教えてあげたい。
都に戻る前に、一度でいいから二人でここを訪れたい。
“ きっと喜んで下さるわ ”
水鈴は首をもとに戻して目線を前にやった。
..... ガサ
──…その時、彼女は