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§ 龍王の巫女姫 §
第15章 白梅の精
その時 彼女は
我が目を疑った。
固まった手から今度こそ手綱が滑り落ちた。
馬は逃げなかったけれど、水鈴の意識は視界に映りこんだある男に完全に奪われていた。
何故なら 彼は──
彼女にとっては幻も同然だった。
すらりとした後ろ姿も
薄墨( ウスズミ )色の長髪も
振り返ったことで現れた品のよい唇も
表情を隠す、目元を覆う薄布も
「…水鈴…様‥‥!?」
自分を呼んだその声も
すべては幻の筈なのに──
「───…… 花 仙 」
放心状態で見つめる先には、確かに
白梅の精が立っていたのだ。