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§ 龍王の巫女姫 §
第16章 淡く儚く 愛おしく
たった一度──互いの名前を呼びあった。
その余韻を残したまま数秒の沈黙が続き、水鈴は呆然と立ち尽くしていた。
「……!」
足の裏が地面にぴったりとのり付けされたかのように、動くことができない。
本当はすぐにでも駆け寄りたいのに──。
こちらに顔を向ける花仙も、同じ様に混乱しているように思えた。
「ぁ……」
何を話すべきかもわからずに水鈴は口を開けてかけるべき言葉を探す。
「……っ」
その瞬間
花仙は背を向けて逃げるように駆け出した。