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§ 龍王の巫女姫 §
第16章 淡く儚く 愛おしく
嗚咽をもらしていた水鈴は少し息苦しくて、手を振りほどこうと軽く俯いた。
しかし彼の手は離れない。
「…よく聞くことです、水鈴様」
肩を抱く腕は力強くて、彼女を責め立てているようにも思えた。
「言葉はしっかり選ばなければなりません」
「……っ」
「悪い男が、つけ込みますよ」
「…ン…んん…ッ」
“ 悪い男とは、誰ですか… ? ”
水鈴には、花仙の意図が汲み取れない。
“ つけ込むって 何? ”
つけ込むも何も、言葉を選ぶも何も、すべては本心だ。他のどんな言葉にも変えられない。
「…プ…はっ」
水鈴は両手を使って、彼の手を引き剥がした。
「つけ上がり…そして、貴女の優しさにつけ込む。…そんな事があってはならない…!!」
「何を言ってるの?花仙──…落ち着いて…っ」
「落ち着いていますよ、私はしごく冷静だ」
冷静でなければ──
こんな状況で自身を抑えるなどできるものか。