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§ 龍王の巫女姫 §
第16章 淡く儚く 愛おしく
「──…峭椋村は私が滅ぼしました」
「……」
覗き込むように耳元に囁かれ
はっきりと届く。
「…村人を殺したのは私です」
「…うそ、です」
「火を放ったのも私です」
「嘘です…」
聞きたくないと駄々をこねて叫んでいた水鈴も、ついに諦めて静かになった。
「花仙は嘘つきだわ…」
「…嘘ではありません」
「──…そんな の、…ッ 信じな 」
水鈴の言葉はそこで止まった
全身から力を失って、くたり脱力する。
花仙は咄嗟に彼女を抱き留め、意識を手放した彼女を黙って見詰めた。
「──…」
彼が顔を横に向けると
隣で若草を食べていた子馬が急に怯えだし、小さく跳ねて駆けていった。
遠のく馬の影を見送りながら…
辛さと安堵が入り混じった溜め息を、花仙はひとりこぼしていた。