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§ 龍王の巫女姫 §
第17章 氷の中の乙女
母屋へ続く廻廊を歩いていると、ちょうど渡り橋を通る呂老人の姿を見つけた。
「──おい」
「やや、陛下…どうされましたかな?」
「水鈴はどこにいる?」
「…水鈴様…?…はて」
急な問いに老人は首をかしげる。
「婆さんと喋っておったはずですがなぁ」
「そうか」
「水鈴様はお外に散策に出掛けられましたよ!」
それほど大きな声で会話していた訳でもないのに、突如として渡り橋の向こうから現れた老婆が老人の代わりに答えた。
どうせ炎嗣の考え事は水鈴だろうと、見抜いていたかのようだ。
「散策か、場所はどこだ」
「そこまではわかりませんねぇ…。馬を連れて気分転換に行かれましたよ。陛下が公務でお忙しいので " 寂しい " ──と呟きながら」
「…は?誰がだ」
「ですから、水鈴様が」
「……」
にこにこと機嫌よく喋る老婆を、炎嗣は上から下まで訝しげに眺める。
…老婆の言葉を疑っているようだ。