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§ 龍王の巫女姫 §
第17章 氷の中の乙女
花仙はいつもの柔らかな声で答えた。
「偶然…で御座います、陛下。水鈴様がここ桃源郷におられるなど、思ってもいませんでした」
「…では質問を変える。水鈴に何をした?」
「それは…」
本質をつく彼の問いに、花仙は口ごもった。
「──…真実を話しました」
「…真実とは、村での事か」
「そうです」
「……」
「…思った通り、陛下は真相を水鈴様に伝えておられなかった」
「……ふん」
伝えられるわけがない
村人を殺したのは、お前を抱いて逃げた男だと。
全てを失った水鈴に…。
「村人を殺したのは、お前の愛する男であると…──そんな真実を伝えてどうなる? 」
「……っ」
「絶望を与えるだけだ」
「貴方まで可笑しなことを仰る…!」
《愛する男》と名指された張本人は、苦い顔で炎嗣を見返した。