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§ 龍王の巫女姫 §
第17章 氷の中の乙女
「お返しします…──貴方の姫君を」
炎嗣の方にさらに一歩近付いた後、若草の上に彼女の身体を横たえる。
「待てよ」
彼はそのまま立ち去ろうとしたので、炎嗣が背後から呼び止めた。
「水鈴は…夢の中で、毎夜お前の名を口ずさむ」
「──…!!」
「お前の影を追っている…」
「…っ…ならば尚の事」
もし、花仙がその身に何も背負わない人間であったなら、彼はそれを知って喜んだだろう。
「──…尚の事、貴方が水鈴様を守らなければならない。…これ以上 私に近付かないように」
「……お前は何者だ? 」
「私は……只の化け物ですよ」
顔だけ振り返った花仙は、横たわる水鈴を名残惜しげに見詰めただけ。