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§ 龍王の巫女姫 §
第17章 氷の中の乙女
そんな彼女の手に目を向けて、炎嗣が話す。
「お前の髪が黒かろうが白かろうが変わらない」
「……っ」
「《 龍の子 》にではない…。俺はお前に、命じているんだ、水鈴 ──生きろと」
その言葉を聞いた刹那、トクンと胸が鳴った。
龍の子にではない──と
彼は確かにそう言ったのだ。
氷ごしの声が急に近く思えてくる。
“ でも…… ”
「でも…ッ ここから出てわたしは何をすれば…!?」
「──…復讐しろ」
復讐、その二文字に
水鈴は反射的に怯え肩をすぼめた。
「…だれ、に…?」
そんな、復讐の相手なんて
ひとりしか知らない──。
「しない…!! 復讐なんて、したくありません…っ」
「我が儘を言うな。復讐を果たすまで死ぬことは許さない」
「…だからって…っ 絶対に…」
復讐すべき相手に心当たりがあろうとも
どうしたって、水鈴は彼を恨めないのだ。
彼を恨むくらいなら
何も考えないほうがずっといい。
ここにとどまって…ここに閉じ籠って…
「…ハァ…っ」
「──…何を勘違いしている」
「……?」
胸を押さえて苦しむ水鈴。
氷の向こうの炎嗣が彼女に呼び掛ける。