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§ 龍王の巫女姫 §
第17章 氷の中の乙女
「神はお前を救いはしない」
炎嗣はずっと同じ場所で、座ったまま氷に手を付いている。
顔をあげた水鈴が彼と目を合わせると
此処へ来い、と
その黒曜( コクヨウ )の瞳が訴えかけてきた。
「…でも、生きていたって…っ 哀しいことしか起きないわ…」
水鈴はふらり立ち上がり、壁を挟んで炎嗣と向かい合う位置に腰を下ろした。
彼と掌を合わせるように
氷に手をおいた。
炎嗣の手は彼女のそれよりずっと大きくて、重ねることはできなかったが…。
「俺たちに平穏な人生は用意されていない」
それでも生きろと、復讐のために。
「残酷な現実の中に幸せを見つけろ。こんな所に逃げ込むな……!」
「……」
氷の外の世界に──
水鈴から愛するものを奪った、無慈悲な世界に
パキッ──氷の割れる音が、彼女を連れ戻す