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§ 龍王の巫女姫 §
第17章 氷の中の乙女
彼女の手を掴んだまま枕元に押さえ付けた。
「いったい何処をうろついていた…」
「……うろついてなんて…ただ、氷の中に閉じ籠っていました」
軽く口付けされて頬を染めた水鈴は、遠い目をして被さる炎嗣を見つめていた。
「…炎嗣様が迎えに来たの。ここから出て、幸せになって…神様を見返すように、言われました」
「……クッ」
彼女の言葉を炎嗣は鼻で笑う。
けれど次の瞬間には、何故か少し照れたように顔をしかめる彼がいた。
「──…この俺が、そんな恥ずかしい台詞を吐くと思うか?」
「…でも…本当です」
「…っ…黙れよ」
ぴしゃり頬を叩かれた。
そして炎嗣は立ち上がって彼女に背を向けた。
普段は威風堂々とした王の背中は、長い不安から救われたことによって……ほんの少し、安堵に震えていたのかもしれない──。