この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
§ 龍王の巫女姫 §
第18章 貴方に届けたい
湯治( トウジ)の日は終わった。
炎嗣と水鈴が離宮を発ち都に帰る。
呂夫婦に挨拶をしながら、水鈴は別れを悲しんだ。
「寂しくなるねぇ…水鈴様と一緒にいると、孫といるようで楽しかったんだが」
「嬉しいわ、おばあちゃん」
「また来てくだされ」
「…また来たいです」
しょんぼりと呟く彼女の言葉を聞いて
「──…」
隣の炎嗣が声を出した。
「必ず戻る」
「……ぇ?」
「また馬と衝突して、俺の背が負傷したらな…」
「そ、そんな…っ 炎嗣様…」
笑いながら冗談を言い捨てた炎嗣は、とっとと向きを変えて馬車に入ってしまう。
焦って赤くなった水鈴も彼の後を追った。