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§ 龍王の巫女姫 §
第3章 永久( トワ )の別れ唄
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いつもの花仙
水鈴は安堵の息をこぼす。
「どうかされたのですか?」
いつもの声
「ええ、花仙が三日間も訪ねて来ないから会いに来たのです」
「そうでしたか…。ですがたったの三日では?」
「三日も会えないと心配になります!」
「…ふふっ、此処で暮らせばそうでしょうね」
「もう…っ、笑い事では…──!!
──花仙!? その顔の傷はどうしたのですか!?」
腫れた頬と切れた口の端…
驚きのあまり水鈴は手で口許を覆う。
急いで彼に駆け寄った。
「酷い傷──っ、痛みは?怪我は顔だけ!?」
「…ちょっ…そうされると痛いです…!」
「腕もなのね?」
彼を見上げながらその両腕を持って激しく揺する水鈴に、花仙は苦笑いを浮かべて落ち着かせようとする。
けれど彼女が落ち着く筈もなく、彼の手を掴んで家屋の外に引っ張り出した。
御堂に行けば湿布と薬草、浄めた水が用意されている。彼女はそこに連れていこうとした。
「水鈴様、この怪我は大したものではありません」
「…いいから…来てください!」
「……っ」
彼女の声に気圧された花仙は、手を引かれるまま家を後にして走っていた。
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