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§ 龍王の巫女姫 §
第3章 永久( トワ )の別れ唄
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水鈴が、彼の手を引き集落を横切る
その光景を鋭く見つめる 目、目、目……
格子の隙間から覗く視線に
彼女が気付く余地もなかった──。
─────
「しみますか?」
「いいえ」
水を張った桶を用意し、絞った布を使って傷口を優しくぬぐう…。
とんとんとん、軽く叩くように擦りむけた皮膚を消毒していった。
夕刻で木洩れ日は朱くなり
足りない明るさをひとつの灯籠で埋め合わせる。
「腕も痛むのですね?他は?」
「…いろいろあります」
平気だと言っても信じない彼女に、とうとう根負けした花仙は白状した。
黒い布状の帯を弛めて、衿を左右に引っ張りはだけさせると、腕を引き抜いて上衣を腰まで下ろす。
「…酷い…!!」
上半身を露にした彼には
鎖骨、腕、肩、背中、横腹と……打ち身や傷が痛々しく付いていた。
それらは昔の傷が痕となったものと、最近ついて治っていないものとが混ざっていた。
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