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§ 龍王の巫女姫 §
第18章 貴方に届けたい
二胡を持って出てきた水鈴は、軒下の炎嗣の隣に腰をおろした。
「何だ?それは…」
「知りませんか?二胡ですよ。夜はひとりで寂しかったから…村長からもらったこれを、いつもひいていました」
弓の弦をあてて音を出す。
その音色はあの日と変わらない──。
「──…」
別に、誰に聴かせるためではなかった
ただその音が好きだから、寂しさを紛らわせられるから、ひいていただけの楽器…。
それが、今は
「……炎嗣様」
「なんだ」
「退屈ですか──?」
「…ふん」
木の葉をさざめかせる、柔らかな音色
「──…俺の耳には、お前の声の方が心地いい」
「……」
水鈴は、弦を持つ右手をスッと下ろした。