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§ 龍王の巫女姫 §
第19章 神への捧げ物
「──…断る」
「……くっ、ははは」
意に反して即答だった。
炎嗣は要求をしりぞけた。
「聞こえたか?水鈴。お前が神を裏切ってまで執着した男は、我が身可愛さに真っ先にお前を切り捨てたぞ…」
意識のない水鈴に
さも愉快げに語りかける男──。
「愚かなだけでなく、臆病者であったか」
「何とでも言え」
「……!?」
刹那、炎嗣の雰囲気が変わって見えた。
それまで彼から出ていた威圧のオーラが
──殺気に変わっている。
「…俺はそう簡単に死んでやる訳にいかない」
「……」
「俺が死ねば…──誰がそいつを守る」
炎嗣は捨てた湾刀を拾うと
今度こそ御堂から飛び降りた。
「…!? 動くな!私に近付くな!」
「その女をな、渡すわけにはいかない」
「……っ」
「そいつの身体に傷をつけてみろよ…! 神の代わりに俺がお前を裁いてやる」
彼の殺気は本物だ。
物静かな低音が大地を震わす──。