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§ 龍王の巫女姫 §
第20章 史書から消えた物語

滝のような雨粒は炎の勢いをあっという間に抑えつけた。
黒くなった堂の木肌が現れ、灰は水に流されてゆく。
しかし、武器を掴んだ男の注意はもはや御堂に向いてはいなかった。
「貴様!よくもこの村に戻ってきたな…!!」
「──…」
目を覆う布を抜き取り、黙って立ち止まったその人物は花仙であった──。
「貴様が龍の子だと?馬鹿馬鹿しい、預言の人間は堂の中の二人だけの筈…!!」
「フ…、確かに その筈 ですね」
「…!!? その目… 」
雷はいまだに止まず
花仙の背後の樹に不規則に落ちている。
素顔をさらした花仙は、そんな状況でも冷静に自身の瞼を上げたのだった。

