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§ 龍王の巫女姫 §
第20章 史書から消えた物語
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赤い目───それは血のような深い赤
線のように細い縦長の瞳
「龍眼 ‥‥」
男は唖然とした。
花仙の目は確かに、預言の内容と一致する。
《 龍の眼を持つ者 》
しかし、そんな筈はなかった。
目の前に現れるわけがないのである。
「…貴様が蒼慶( ソウケイ )なのか…ッ…? だがっ、あの男は既に…──ッ」
「…蒼慶という男は、既にこの世にいない」
「そうだ! あの男は獄中で火事に巻き込まれ、数年前に死んだとされておる…!!」
そこまで言って、男は何かに気が付いた。
「……」
先ほどまで燃えていた御堂──
そして今、降りしきる雨。
「生き延びていたのか…!?」
「…ええ、神の気まぐれによって」
口許で微笑みながら話す花仙の──その目は、笑っていない。
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